知の統合は可能か (単行本)

パンデミックに突きつけられた問い

単行本

人類の危機を救うために専門知を結集させる〈総合知〉は可能なのか 新型コロナウイルス感染症を総括して、未来に託す!

著者 瀬名 秀明
渡辺 政隆
押谷 仁
小坂 健
ジャンル 社会・歴史
科学・テクノロジー
出版年月日 2023/03/20
ISBN 9784788718692
判型・ページ数 A5・580ページ
定価 3,080円(本体2,800円+税)
在庫 在庫あり

 人類の危機を救うために専門知を結集させる〈総合知〉は可能なのか 新型コロナウイルス感染症を総括して、未来に託す!

総合知とは、各人が各々の専門知を持ち寄って、相互流通性を確立することで、目の前に実際にある社会的な問題を具体的に解決してゆこうとする、総合的な知のあり方だということになる。となれば総合知は専門家一人では成しえない。

──瀬名秀明

深刻な問題ばかりでなく、雲のサイエンスを楽しく語り合うこともまた、サイエンスコミュニケーションの妙味である。今はまだ先が見えないが、いつかきっと霧は晴れると信じたい。
──渡辺政隆

本書の前半〔第九章まで〕は、瀬名による8名の専門家へのインタビュー(執筆は渡辺が担当)を収載。新型コロナ対策を政府に助言してきた専門家会議・有識者会議のメンバーである押谷仁、国のクラスター対策に携わり自ら感染拡大防止のクラウドファンディングも立ち上げた小坂健(ともに東北大学教授)という感染症のエキスパートに加え、医師や法学者、社会心理学者、科学哲学者、物理学者、宗教人類学者との対話を通して、新型コロナ・パンデミックという「大災害」の実像を、医療の最前線だけでなく、そこに否応なく巻き込まれた社会や個人の側からもあぶり出していきます。また後半では、新型コロナや次なるパンデミックを人類が乗り越えるための鍵として、専門知の限界を打破する「知の統合」に焦点を当てます。専門家たちとの対話から得た知見を基に、瀬名と渡辺の二人は、専門知を超えた「総合的な知」のあるべき姿を模索して、さらに議論を重ねていきます。


日々のニュース報道からだけではうかがい知れない関係者の奮闘や苦悩、新型コロナを巡る社会不安の中で生み出された膨大な量の言説、そして危機にあってこそ光を放つ古典の鍛え抜かれた思想。これらを丹念にすくい上げる長い旅路ののち、作家が見出した〈総合知〉の眺望とは⸺⸺。パンデミックの行く末を照らし、「ポストコロナ」「withコロナ」の社会のありようを探る、現代人必読の一冊です。



他著者:大渕憲一・野家啓一・石井 正・木村敏明・飯島淳子・ 本堂 毅
装画:柳智之



※ご自由にダウンロードください。
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する書籍リスト」Ver.1.1(2023.5.2更新)
PDF版
Word版


※電子書籍版で下記の箇所を修正致しました。
 「単行本と電子書籍版の正誤表」

"はじめに──COVID-19で試される〈総合知〉 渡辺政隆

感染症に関する基礎用語解説集

第一章 〝お役所仕事〟の新型コロナ対策の現場 ×小坂健
立ちはだかるITと個人情報の壁
スケープゴートと陰謀論
リスクコミュニケーションの課題──「ゼロリスク」という幻想
「安心」と「安全」は違う
「よい妄想」から出た、東北大学の新たな取り組み
〈対談を振り返って〉多くの教訓は変革のためのチャンスとも いえる(小坂健)

第二章 人はなぜ攻撃的になるのか ×大渕憲一
人間は利己的なのか利他的なのか
ポジティビズム(前向き主義)の勧め
求められる専門家の矜持
シンパシーとエンパシー
マトリョーシカ人形
オピニオンリーダーの役割
〈対談を振り返って〉人間の本性の二面性が人類の命運を左右する(大渕憲一)

第三章 専門家の枠を打ち破る〈総合知〉 ×野家啓一
トランス・サイエンスの正念場
「専門家」とは誰か
「 移動する自由」に対する意識の違い──法で決める欧米と〝空気〟ですます日本
リーダーシップとガバナンスの問題か?
身体性を通じた他者理解ができない中で…
問われているのは、バイオポリティクス(生政治)の真価
〈専門知〉から〈総合知〉へ
〈対談を振り返って〉〈総合知〉は、ボトムアップのかたちで しか育たない(野家啓一)

第四章 災害医療と地域パンデミック対応 ×石井正
パンデミックへの初動対応
COVID-19対策にヒーローは不要
「地域貢献」という東北大の学風
火事にたとえると、自然災害は大爆発、COVID-19は山火事
〈対談を振り返って〉〝知〟の実践をなしうる体力と体制を(石井正)

第五章 人と寄り添う──宗教人類学からのアプローチ ×木村敏明
災害は天罰?
宗教者による寄り添いと心のケア
医療従事者へのケア──専門家と社会との分断
「寄り添う」とは何か
コロナが追い打ちをかけた、看取りと葬儀の問題
一気に噴出した、不平等感と不公正感
〈対談を振り返って〉「不決まりさ」による不安に対処する知恵(木村敏明)

第六章 地方自治とパンデミック──地方行政に託される課題 ×飯島淳子
ワークショップによる学生たちの問題意識
「特措法」と力量が試される各知事
ヒアリングから見えた地方行政の改善点
地方自治を担う人材育成──個人を基点に
〈対談を振り返って〉「2019年」以後の経験を教訓に(飯島淳子)

第七章 専門家が果たすべき役割とは──「専門知」の活かし方 ×本堂毅
「緊急声明」で出した、エアロゾルへの注意喚起
「専門家会議」はどうあるべきだったか──日本で足りない「予防原則」の議論
「専門知の総合」は可能か
〈対談を振り返って〉個々の学術的知見を現実社会で活かすには(本堂毅)

第八章 COVID-19の特異性を理解してこそ ×押谷仁
2009年の新型インフルエンザが、パンデミック対策への危機感を薄めた
感染症の専門家が関与していない「特措法」の制定
どこから出たのかわからず、変異に連続性のないウイルス
WHOの致命的なミス
COVID-19襲来──「第1波」では何が起こっていたか

第九章 いまこそ〈総合知〉を──COVID-19は転換点 ×押谷仁
メディアへの不信
国民に伝わらなかったメッセージ
切り札の切りすぎ
パンデミックは都市問題、貧困格差問題
「何人までの死者なら許容するのか」
問題が複雑化・長期化している
真の学際研究とは
対談を終えて──見えていなかったものをもう一度見る〝大航海時代〟の始まり
〈対談を振り返って〉パンデミックは、科学技術だけでは克服 できない(押谷仁)

第十章 〈総合知〉に何ができるのか①──いままでを振り返って 瀬名秀明×渡辺政隆
われわれは何を学んだのか
「サイエンスコミュニケーション」のあり方が問われている
〈専門知〉が市民につながらない現状
「サイエンスコミュニケーター」とは誰なのか
信頼関係が欠如している
サイエンスを語る資格は誰にもあるはずだが…
パンデミックを歴史から学ぶことは、〈総合知〉のきっかけになる
科学の専門用語をどう使うべきか──「進化」と「進歩」の例
想像力の欠如、次世代への知の引き渡しの分断

第十一章 〈総合知〉に何ができるのか②──科学なしでも科学だけでも 瀬名秀明×渡辺政隆
サイエンスコミュニケーションと科学リテラシーのあり方
トランス・サイエンスの時代──科学なしでも科学だけでも解決しない問題
リスクはいつ、どうやって伝えるべきか
孤高の専門知は世界を救えない
人は性悪な生きものなのか
文化を生む脳が進化した
人間は理性によって、人類や社会を「進化」させられるのか
「自己責任」という名のもとで…
ポップサイエンスはありか

第十二章 〈総合知〉に何ができるのか③──知の統合をめざして 瀬名秀明×渡辺政隆
シンパシー、エンパシー、コンパシ──「共感」の混乱
シンパシーは状態、エンパシーは能力
内なる「公平な観察者」の視点──再びアダム・スミスへ
西欧と日本の「連帯」
友だちか仲間か──『映画ドラえもん』より
そして「思いやり」
「忖度」「同調圧力」に屈しないために…
おたくの人もバランスのいい人も必要──「コンシリエンス」をめざして
国家や組織のためではなく、それを超えた「理性」で知性を使う
正義感を振りかざしたバッシング
通じる言葉、通じない言葉

第十三章 SDGS-IDセミナー 2022年9月30日 押谷仁・小坂健
新型コロナウイルス(COVID-19)から明らかになったパンデミック対応の課題(押谷仁)
新興感染症の脅威/COVID-19への各国の対応/日本の感染症危機管理体制の課題/今後起こりうることのシナリオ
COVID-19パンデミックの経験からこれからの社会を考える(小坂健)
インフォデミック/新型コロナ感染後遺症/データマネジメント
質疑応答

第十四章 総合知と全体知の新たな「連帯」に向けて 瀬名秀明
パンデミックは〝終わりが視野に入った〟のか
人間の限界性
〝総体〟として新型コロナ問題を捉え直す
専門知から統合知へ、そして総合知と全体知へ
鐘は歓びのためにも鳴る

知の航海の同行者として──編集後記に代えて 渡辺政隆

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する書籍リスト 瀬名秀明
(※紙の書籍版では割愛し、データでの掲載先URLを記載)"

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