外交 Vol.94

• 特集「中国習近平体制をめぐる思惑」

■習近平国家主席は「独裁」なのか

　国家主席「2期10年」の任期制限を憲法改正で撤廃し、現在3期目の中国・習近平国家主席は、無敵なのか。長期独裁を狙うのか。中国政治が専門の鈴木隆・大東文化大学教授と川島真・東京大学教授の対談「習近平体制 個人独裁への政治力学」は、その権力基盤を政・軍・地域・歴史にわたって分析。

■共産党や軍に「異論」はないのか

　10月の中国共産党の会議「四中全会」声明に習近平体制への「異論」が読み解けると益尾知佐子・九州大学教授が注目。林載桓・青山学院大学教授は共産党中央軍事委員会の大幅縮小を、習主席の権限拡大を読み取ります。

■中国経済は変調か

　津川俊哉・日本国際問題研究所客員研究員は、地方政府の公共事業バブル崩壊に注目。倉田徹・立教大学教授は、民主化が後退した香港で、北京政府が大規模開発に乗り出す顛末を、丸川知雄・東京大学教授は、実用化・実装が急速に進む「街場のAI」をレポート。

■世界は習政権とどう関わるか

　トランプ大統領の「印パ仲介手柄話」で米印関係が悪化。代わりに中印関係が改善するも緊張含みだと近藤正規・国際基督教大学上級准教授が、中央アジア諸国と中国が最近密な関係だと宇山智彦・北海道大学教授が、さらにラテンアメリカ諸国で中国が食い込む様子を岸川毅・上智大学教授が分析。自動車・化学産業の対中依存が深いドイツの苦悩をグレゴール・セバスティアン氏が描きます。

• FOCUS「危機の時代に向き合うAI」

　民生・軍事問わず急激に利用が進むAI。飯塚恵子・読売新聞編集委員は、米国と欧州のAI開発の思想が異なることを挙げ、AI開発に哲学が必要だ。村野将・ハドソン研究所上席研究員は、核攻撃やミサイル防御システムのAI最前線をレポート。必見の論考。中谷純江・一橋大学教授は、世界的に開発進む災害予測・救助や被災者支援AIシステムのオープンソースなど開発手法が、中央集権的な日本の防災システムに適応しないと指摘。

• ガザ停戦は和平に続くか

　ガザ停戦「第1段階」が合意。米国主導の停戦枠組みはうまくいくか。溝渕正季・明治学院大学教授が楽観的でない理由とは。

■日韓国交正常化60年

　1965年の日韓国交正常化から60年。ひとり一人が「見合う」関係づくりが大切。小針進・静岡県立大学教授が論じます。

■最新の世界の動きを捉える

　サウジアラビアとパキスタン相互防衛協定は中東秩序を変えるか。近藤重人・日本エネルギー経済研究所主任研究員が分析。アフガニスタン大地震の救援活動に尽力するペシャワール会の活動は、外務省からはインド・モディ首相来日の意義を小野啓一駐インド大使が、トランプ政権で危機のSDGsの現況を中村亮地球規模課題審議官が、アフリカ開発会議（TICAD9）の意義を村上顯樹前アフリカ部参事官が総括します。

　中国の海洋進出で地政学的にも注目される太平洋諸島。中西寛・京都大学教授と峯陽一JICA緒方貞子研究所の峯陽一所長がパラオを訪問、開発援助の最前線を見てのトークもお楽しみください！

特集◎中国習近平体制をめぐる思惑

対談◎習近平体制個人独裁への政治力学
鈴木隆（大東文化大学）×川島真（東京大学）……6

「玉虫色のコミュニケ」に浮かぶ中国政治の対立軸
益尾知佐子（九州大学）……16

中央軍事委員会に起きている「異変」
林載桓（青山学院大学）……22

28
「パックスチャイナ」は来ない
津上俊哉（日本国際問題研究所）……28

技術大国中国のＡＩ最前線
丸川知雄（東京大学）……36

香港「中国式」開発は浸透するか
倉田徹（立教大学）……42

インドと中国 緊張はらむ大国間関係
近藤正規（国際基督教大学）……48

中央アジア諸国で拡大する中国の存在感
宇山智彦（北海道大学）……54

米中のはざま ラテンアメリカ諸国の「発展戦略」
岸川 毅（上智大学）……60

ドイツ 未完の戦略転換
グレゴール・セバスティアン（ローディアム・グループ）……66
〔以上で特集終わり〕

イスラエル・ハマス 和平への「第一歩」となるか
溝渕正季（明治学院大学）……70


日韓関係深化の「解」を探して
小針進（静岡県立大学教授）……76


FOCUS◎危機の時代に向き合うＡＩ

ＡＩ時代 人間固有の価値観とは 哲学界と産業界の対話から
飯塚恵子（読売新聞）……82

ＡＩ時代と核抑止
村野将（ハドソン研究所）……88

科学外交・国際協力としてのＡＩ活用
中谷純江（一橋大学）……94

アラウンド・ザ・ワールド
ネパール政変 飛び火するＺ世代革命
植木啓太（時事通信）……100

ボルソナロ前大統領に禁錮27年判決
田中健吾（時事通信）……102


TREND2025

パラオから見た日本の国際協力
対談◎中西寛（京都大学）×峯陽一（ＪＩＣＡ緒方貞子研究所）……104

モディ首相訪日 日印関係の「ゴールデン・チャプター」を開く
小野啓一（駐インド大使）……114

サウジ・パキスタン相互防衛協定のインパクト
近藤重人（日本エネルギー経済研究所）……120

アフガニスタン大地震 ペシャワール会の支援活動
村上優（ペシャワール会、平和医療団日本）……126

132
危機に瀕するＳＤＧｓ
中村亮（外務省）……132

外交現場から見たＴＩＣＡＤ９
村上顯樹（外務省）……138


〔連載〕
外務省だより……35

インフォメーション……113

ブックレビュー
『ルペンと極右ポピュリズムの時代 〈ヤヌス〉の二つの顔』渡邊啓貴著、白水社
『アウトサイダー・ポリティクス ポピュリズム時代の民主主義』水島治郎編、岩波書店
中村督（北海道大学）……144

新刊案内……148

英文目次……150

ＩＮ＆ＯＵＴ……153