女性のためのおしり読本

本書は「痔に悩んでいるけれど、恥ずかしいのでなかなか病院に行けない女性」に向けて書かれた本です。

おしりのトラブルの代表である痔は、日本人の３人に１人がその持ち主といわれるほどポピュラーであり、女性にも多い病気です。ところが、とくに女性は、気恥ずかしさからだれにも相談できず、痔の症状があっても放置してしまったり、自己流の誤った対処法でやり過ごしてしまったりして症状が悪化してしまいがちです。著者は、大腸肛門病の専門医として40年以上、多くの患者さんの痔の治療や手術を行ってきました。

社会保険中央総合病院（現・JCHO 東京山手メディカルセンター）で副院長・大腸肛門病センター長を務めた後、東京・銀座に個人の診療所を開設し予約制で患者さんを診察しています。著者の診療所でも女性の患者さんは少なくありません。日々大勢の患者さんたちを診察していて著者が実感するのは、女性たちが生き生きと快適に生活するためにも「女性の方々にも、もっと痔のことやおしりのケアについて、正しい知識を持っていただきたい」ということです。

痔のセルフケアや応急処置の仕方、女性が痔になる原因、そして肛門科での診察について、女性の痔のケアの手引きになる情報をまとめました。現在、薬局・薬店で販売されている市販薬のリストと使い方も掲載していますので、ぜひ参考にしてください。また、病院選びについても案内しています。

もしかしたら、「痔を治すには手術しかないのではないか」と思い込んでいる方もいるかもしれませんが、ほとんどの痔は薬による治療や生活習慣の見直しで改善します。正しい知識を得ていただくと同時に、どんなときに医療機関へ行ったほうがいいのかも知ってください。

女性たちが元気でもっと活躍するためにも、痔の症状を上手にコントロールして、おしりのトラブルを防ぎましょう。


【本書内容】
第１章　恥ずかしい、でも治したい女性の方々へ
第2章　あなたの痔はどのタイプ？
第3章　病院へ行かずに痔は治せる？
第4章　こんなときは病院へGO!
第5章　病院ではどんな治療をするの？
第6章　どうして痔になるの？
第7章　治ったあとも油断は大敵
第8章　病院はどうやって探すの？
第9章　痔に関するＱ＆Ａ

はじめに
第 1 章　恥ずかしい、でも治したい女性の方々へ
　　10代から高齢者まで！ 女性にも多い病気「痔」
　　痔になるのは現代人の宿命です
　　痔と向き合って、痔をコントロール

第 2 章　あなたの痔はどのタイプ？
　　痔のタイプは大まかに３つに分けられます
　　知っておきたいおしりの構造と肛門の働き
　　便やガスのもれを防ぐおしりの筋肉
　　だれにでもある肛門のクッションって何？
　　一番多い「痔核」には、どんな症状があるの？
　　「内痔核」の進行は、Ｉ度からⅣ度まで
　　痛みがあるのは「血栓性外痔核」「嵌頓痔核」
　　症状が残便感だけなら「直腸瘤」「直腸脱」「子宮脱」であることも
　　「裂肛（切れ痔）」の代表的な症状って？
　　裂肛が慢性化すると「肛門ポリープ」と「見張りいぼ」が発生
　　裂肛が悪化すると「肛門狭窄」になる人も
　　「痔ろう」の症状はひどいの？
　　痔ろうになりやすいのはどんな人？
　　４つのタイプがある痔ろう

第 3 章　病院へ行かずに痔は治せる？
　　セルフケアだけで治せるの？
　　便通を整えることがセルフケアの第一歩
　　肛門を清潔に保つためには
　　排便習慣の見直しで痔が改善
　　痔の薬は坐薬、軟膏、内服薬の３タイプ
　　市販薬を選ぶときに注意したいこと
　　こんなときはどうしたらいいの？ 応急処置の仕方
　　　◇　激しい痛みがあるとき
　　　◇　おしりから出血したとき
　　　◇　肛門から痔核などが出て戻らないとき
　　　◇　かゆみがあるとき

第 4 章　こんなときは病院へGO！
　　おしりに痛みがあり発熱があるとき
　　おしりからべたべたした汁が出て下着が汚れる
　　市販薬を使ってみたけど改善しない、悪化したとき
　　排便時におしりから何か出てきて戻らないとき
　　切れ痔を繰り返して細い便しか出ないとき
　　おしりから出血、便に血が混じったとき
　　女性に増えている大腸がん
　　大腸がんの早期発見のためには

第 5 章　痔と間違われやすい病気って？
　　病院ではどんな治療をするの？
　　肛門科の診察は、まず問診から
　　診察台に横になった姿勢で行う「視診」「触診」「指診」
　　診察はほとんど痛みを伴いません
　　肛門科を受診するときの服装は？
　　初期の痔核は、保存療法で改善します
　　外来で受けられる痔核の治療法
　　　◇　ＰＡＯ注射療法
　　　◇　ゴム輪結紮療法
　　痔核の手術療法と A L T A療法
　　　◇　結紮切除術
　　　◇　ＡＬＴＡ療法（ジオン注射）
　　　◇　ＰＰＨ法
　　裂肛はどんな治療をするの？
　　　◇　用手肛門拡張手術（AD）
　　　◇　内括約筋側方皮下切開術（LSIS）
　　　◇　皮膚弁移動術（SSG）
　　痔ろうはどんな治療をするの？
　　　◇　切開開放術
　　　◇　括約筋温存手術
　　　◇　シートン法

第 6 章　どうして痔になるの？
　　女性の痔の最大の要因は便秘
　　ダイエットで腸の動きが悪くなるワケ
　　女性ホルモンと便秘との関係は？
　　女性は男性より便を押し出す力が弱い
　　便意をもよおしたらがまんは禁物、すぐにトイレへ G O !
　　ストレス・睡眠不足も便秘や下痢の原因に
　　安易な便秘薬の乱用が痔をまねく
　　「トイレに長居」することが、痔核を育てています
　　冷えやウエイトトレーニングも痔のきっかけに
　　妊娠・出産で痔が悪化する人も

第 7 章　治ったあとも油断は大敵　― 痔を再発させないための予防法 ―
　　便意がないときには「無理にいきまない」こと！
　　朝食抜き、ダイエットは厳禁です
　　水分はしっかりとり、食物繊維の多い食事で便秘解消を
　　腸内環境を整え、腸内美人になろう
　　いつもおしりを清潔に！
　　毎日の入浴で痔の原因の「冷え」を防止
　　思いついたら、姿勢を変える習慣を
　　有酸素運動＋腹筋運動で便秘解消を
　　１日１度は肛門体操を心がけて
　　ＯＮとＯＦＦを使い分け、ストレスとうまくつきあおう

第 8 章　病院はどうやって探すの？　― 病院選びのアドバイス ―
　　痔を専門とする医師を選ぶのがベスト
　　日本臨床肛門病学会のサイト「痔を専門とする医師を探そう」とは
　　かかりつけ医に紹介してもらう手も
　　女性専用外来がある医療機関も

第 9 章　痔に関するＱ＆Ａ
　　辛い食べものは痔に悪いって本当ですか？
　　アルコールやたばこの影響はありますか？
　　痔のときにやらないほうがいいスポーツはありますか？
　　痔は婦人科では治療できないのでしょうか？
　　生理中に受診しても大丈夫ですか？
　　大きな病院へ行くメリット・デメリットを教えてください。
　　痔は遺伝しますか？
　　数年前から肛門の近くにいぼのようなものができています。
　　痛くもかゆくもないのですが、治療の必要はありますか。
　　また、保険診療により手術で取り除くことは可能でしょうか？
　　
　　数年来、肛門から痔核のようなものが出ています。
　　とくに生活に支障はありませんが、このままにしていても大丈夫でしょうか？
　　
　　現在、妊娠４カ月です。以前から痔核がありますが、妊娠中に市販薬を使っても大丈夫ですか？
　　
　　毎日排便しないと気が済まず、市販の下剤や浣腸が手放せません。
　　下剤と浣腸ではどちらが安全なのでしょうか。
　　
　　職場には温水洗浄機能付き便座がありません。
　　外出先で、排便後におしりをきれいに洗う方法はありますか？
　　
おわりに