男性が家庭や趣味を犠牲にして働く社会はおかしくないか!?



男性が家庭や趣味を犠牲にして働く社会はおかしくないか!?
『ジェンダーで読み解く 男性の働き方・暮らし方―ワーク・ライフ・バランスと持続可能な社会の発展のために』(多賀太)


「男は仕事、女は家庭」「女性が参加する会議は時間が掛かる」など、日本に根付いていた性的役割分業観は、長らく女性の社会的活躍の機会を奪ってきた。その一方で考えるべきなのは、男性にも「男らしさ」を押し付けてきたのではないかという点だ。 

 本書は、日本の男性のこれまでの働き方と暮らし方を振り返り、そこで生じているさまざまな問題の背景を探るとともに、これからの社会を生きる男性たちにとっての新たな働き方と暮らし方を読者と共に考えていこうと訴える。 

 具体的に取り上げる話題は、仕事の仕方から家庭での家事・育児や子どもの教育のこと、そして職場でのハラスメントやドメスティック・バイオレンス(DV)までと、多岐にわたる。読者によっては、これらの話題のいくつかは自分には関係ないと思われるかもしれない。しかし、これらの問題はすべて深いところでつながっている。そして、そのつながりを読み解く鍵が、本書のタイトルにも使われているジェンダー(社会的・文化的につくられた男女のあり方)だ。 


 

 昨今、日本社会でジェンダー問題への関心は、新聞やネットでそれに関する記事を目にしない日はないほど高まっている。しかもここ数年、女性問題だけでなく男性の生きづらさや性の多様性に関する報道もずいぶんと目につくようになってきた。特に若い層を中心に、ジェンダー問題を自分事と捉え、発言し行動する男性も増えている。 


 とはいえ、男性たちの現在の働き方や暮らし方、そして彼らをそうした生き方に仕向けている社会の仕組みにはいまださまざまな課題が存在しており、またそのことが日本社会の停滞とも大きく関係している。 


 

 本書には、自分自身の働き方や暮らし方、家族や職場の同僚との関係をよりよいものにしていくための手がかりや、一人一人がワーク・ライフ・バランスの取れた生活をしながら社会が持続可能に発展していくためのヒントが具体的に分かりやすく示されている。そして、これまでの男性のあり方を単に批判して終わるのではなく、私たちの社会を、男女がウィンウィン(win-win)の関係になりながら持続可能に発展していく社会、性別にかかわらず誰もが希望を持ってよりよく生きられる社会にしていくために、男性たちには何ができるのか、というポジティブな視点からのさまざまな提案も試みている。男性はもちろん、子育て世代にはぜひ夫婦で一緒に読んでもらいたい。 

 

 

■著者プロフィール 

多賀 太(たが・ふとし) 

関西大学文学部教授。1968年、愛媛県宇和島市生まれ。九州大学教育学部卒業後同大学院に進み、1999年、「男性のジェンダー形成に関する研究」で博士(教育学)を取得。九州大学助手、久留米大学助教授、関西大学准教授などを経て、現職。主な役職にホワイトリボンキャンペーン・ジャパン共同代表、デートDV防止全国ネットワーク理事、日本女性学習財団評議員、奈良県・京都市男女共同参画審議会委員など。専門は教育社会学、家族社会学、ジェンダー学。著書に、『男性のジェンダー形成』『男らしさの社会学』『男子問題の時代?』『揺らぐサラリーマン生活(編著)』『男性の非暴力宣言(共著)』など。 


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