上司と部下はなぜ分かり合えないのか

職場のトリセツ


上司と部下はなぜ分かり合えないのか
「妻のトリセツ」の著者が教える職場のストレスの原因と対処法



 恒例の「理想の上司」アンケート(明治安田生命)によると、トップはこの5年間、男性がウッチャンこと内村光良さん、女性が日本テレビのアナウンサー・水卜麻美さんで、どちらも「親しみやすい」「優しい」イメージが不動の人気の理由だという。

 一方、「理想の新入社員」は米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手。こちらは、「実力がある」だけでなく「謙虚・つつましい」イメージが高評価につながった。

 彼らが上司と部下なら、さぞかし毎日の職場も楽しいことだろう。

 

 だが、「現実」はどうかといえば、そこは「理想」の裏返し。

 世の中の上司が、みんな内村さんであるはずもなく、親しみやすさも優しさもない上司が、見渡せばあちらこちらにいるはずだ。実力がないのに、謙虚さに欠ける部下もまた…。

 

 そんな上司と部下だから、日々の会話はかみ合わず、感情はすれ違う。もっとも、昔から上司と部下はうまくいかないのが通り相場で、職場にイライラ・モヤモヤは付き物だった。

 

 だからといって、このままでいいはずはない。お互い、理想の上司・部下ではないけれど、少しでもそれに近づけないものか―。

 そんな思いにこたえるのが、ベストセラー『妻のトリセツ』で知られる黒川伊保子氏の新著『職場のトリセツ』だ。かつて人工知能の開発に携わった黒川氏らしく、上司と部下では脳のタイプが違うのだということから、話は始まる。

 

 黒川氏によれば、人の問題解決や話し方には二つのタイプがある。目標を最初に定めて問題解決を急ぐ「ゴール指向問題解決型」と、感情を手掛かりに経緯を話すことで真理に到達する「プロセス指向共感型」。前者は男性に多く、後者は女性に多い。

 

 これは、「脳がとっさに使う神経回路」が男性と女性では異なるためだが、実は上司と部下にも立場によって同様の違いが生じ、上司は問題解決型、部下は共感型の対話になりやすい。

 脳にはタイプの違う相手を不快に思う癖がある。だから、事の経緯をつらつら話す相手に夫や上司はイラつき、結論をせかす相手に妻や部下はムカつくことになる。

 

 必要なのは何か。それは、互いの違いを踏まえた対話のテクニックだ。

 そこで著者が勧めるのが、上司は「人の話は共感で受ける」、部下は「自分の話は結論から言う」。こうしておけば、まずストレスは軽減される。

 ほかにも「ネガティブな話は『わかる』で受ける」「ポジティブな話は『いいね』で受ける」など、上司と部下の具体的な対話のコツが紹介される。

 

 〈人の上に立つ者は、部下の提案は「いいね」で受けると腹に決めたほうがいい。(略)

気持ちさえ受け止めてもらえれば、部下は頑張ることができる。「あの人、プロだから仕事にはほんっと厳しいんだ。けど、わかってくれてるから」と言われるボスになる。〉

 

 共感型の部下にとって、この「わかってくれてる」感こそが、理想の「優しい上司」の本質かもしれない。他方、本書には、「謙虚な部下」になれる技も載っている。事実はさておき「気持ちにだけ謝る」という奥の手だ。

 

 このほか、本書によれば、人には身体の動かし方にも種類があり、世代によって共鳴反応(人の話にうなずいたりする反応)に強弱の違いもある。これらのタイプに応じたトリセツは、どれも実践的で役に立つ。

 

 コミュニケーション力を本書で磨き、理想の上司と部下へ一歩踏み出していただきたい。

 

 

■著者プロフィル

黒川伊保子(くろかわ・いほこ)

1959年、長野県生まれ。メーカーで14年間にわたり人工知能開発に従事した後、(株)感性リサーチを創業。独自の語感分析法を開発し、これを応用したネーミングで新境地を開いた。男女の脳では「とっさに使う神経回路」が異なることを基にした著作も多く、『妻のトリセツ』をはじめとするトリセツシリーズが人気。



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