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自分の小中学生時代とは大違い!
タブレットを使ったおもしろ授業を紹介する
「ICT“超かんたん”スキル」
「最初に質問です。教科書にアメリカ、中国、ブラジル、サウジアラビアについて説明がありますね。この中から住みたい国をひとつ選んでみよう。じゃあ『アメリカ』という人手を挙げて! 1、2、3、……12人ですね。次は中国。1、2、3……」
先生がこんな質問をする小中学校の授業。なかなか手を挙げられず、周囲をキョロキョロ見渡して、友達につられて挙手していたという思い出をもつ人は少なくないのではないだろうか。
思えば、昭和・平成時代、学校の授業で自分から意見を表明できる子どもはごく少数だった。クラスの優等生か、みんな笑わせてやろうとするひょうきん者だけ。圧倒的に多くの「普通」の子どもは意見を言えないし、そんな教育が続いてきたからなのか、日本人は大人になっても組織でなかなか自分を出そうとしない。
でも、もしかしたら令和の時代になり、そんな日本人像が創造的に破壊されていくかも知れない。
なぜなら今、学校現場では子ども1人に1台のタブレット端末を配備する「GIGAスクール構想」が実現し、やる気と実力のある教師たちが、どんどん新しい授業スタイルに挑戦しているからだ。
本書の著者となった11人の教師たちは、日本に約40人しかいないGoogle for Education認定イノベーターを含むICTの達人たち。そんな教師が冒頭のような授業をするとどうなるのか。
何とオンラインでアンケートをとれる「Mentimeter」というサイトを使って、子どもたちにリアルタイム投票させ、電子黒板に映し出すのだという。これなら、誰もが意見を表明できるし、クラス全体で結果をすぐに共有できる。
他にも、デジタル化されたホワイトボードにグループで意見を貼って分類する「デジタル付箋」、子どもたちが同時並行で書いていく「デジタル壁新聞づくり」、朗読の宿題を録音して教師に提出させる「音読録音カード」などなど、29の興味深い実践が紹介されている。
著者陣は、GIGAスクール構想で学校に入った端末が使われず「文鎮化」するようなことがあってはならないという問題意識から、本書を執筆した。
「ICTに不慣れな先生でもすぐに取り組めて、授業や校務を劇的に改善できる『超かんたんスキル』」を集めたと「はじめに」にある通り、紹介されている実践は確かに単純なものばかり。それでも、創造的な学びになるであろうことは、教壇に立った経験のない素人が見ても容易に想像できる。
「うちの子、学校からタブレットを持ち帰ってきたけど、なんだか遊んでるだけみたい」と感じている方は、担任の先生に一冊プレゼントしてもいいかもしれない。
■著者プロフィール
和田誠(わだ・まこと)<執筆者代表> ほか10名
愛光中学・高等学校教諭。Google認定トレーナー/イノベーター、ロイロ授業デザイントレーナー。