大型地震は必ず来る!「通勤鞄」に入れておきたいものは?

『次の震災について本当のことを話してみよう。』


大型地震は必ず来る!「通勤鞄」に入れておきたいものは?
― 福和伸夫『次の震災について本当のことを話してみよう。』


 「天災は忘れた頃にやってくる」とは、物理学者・寺田寅彦の言葉だが、大きな地震に何度も見舞われている日本でも、自分の生活する地域が大地震に襲われる可能性を考える人はそう多くない。 

 今、私たちが最も警戒しなくてはいけないのは、首都直下地震、南海トラフ大地震だ。 

 

 『次の震災について本当のことを話してみよう』の著者、福和伸夫・名古屋大学減災連携研究センター長は、同書で「戦後40年、大都市での大きな地震がなく、日本は経済成長を遂げました。この間、電気、燃料、水道、通信網が高度に発展し、それを基盤にした社会に日本人は生きています。次の巨大な震災はそれらをすべてストップさせて容易に回復できないという、過酷な事態をもたらす可能性があります」と警鐘を鳴らす。 

 

 さらに、南海トラフ大地震が発生すれば、想定される被害は「最悪の場合、震度7の揺れは東海地方から四国、九州まで10県153市町村に及び」「国民の半数が被災者になる可能性がある」とも指摘する。阪神・淡路大震災、東日本大震災のような大きな地震ですら、被害を受けた人たちは日本の人口の5%。次の震災はその被災者が国民の50%に跳ね上がる可能性があるのだ。 

 

 ではどうすればよいか。 

 

 まず個人で出来ることは、普段の通勤・通学のバッグの中に当面必要となりそうな小銭や現金(停電などで、スマホアプリやカードでの決裁ができないことがある)、非常食として小型携帯栄養食や羊羹、携帯用トイレ(100円ショップなどで購入可能)などを持ち歩くこと。こうした小さい行動がとっさの時に役立つ。 

 

 自宅では、家具の倒壊による圧死やけがを防ぐために固定金具を用いることをはじめ、非常用食料や飲料水を「ローリングストック」(使いまわしながら、備蓄も同時に行うこと)すること、災害用伝言ダイヤルの練習をするなど、もし地震があったらどうすべきかをシミュレーションして対策を取ることも必要になる。 

 

 企業や役所などの組織は、本当に使えるBCP(事業継続計画)を作成し、常に点検して、穴がないか探すことを心掛けなくてはならい。そして、防災訓練を繰り返し、問題点の検証をすることも重要だ。必ず来る震災を生き延びた企業は勝ち組となり、復旧が遅れた企業は負け組となる。過去、多くの地震で、対応できなかった企業は破綻した。 

 

 東京都の小池百合子知事は、2021年10月22日の記者会見で、首都直下地震や南海トラフ地震の東京都の被害想定を見直すことを表明した。2022年度初めに新たな想定を公表するとしている。現在の想定では、最悪で死者1万人、約30万棟の建物被害が出るとしている。見直しにより、この数はより増えるだろう。 

 

 次の震災に間に合う対策が取れるか。 

 本書で過去の震災やそこから得られる教訓を学んでほしい。 

 

 

■著者プロフィール 

福和伸夫(ふくわ・のぶお) 

1957年生まれ。名古屋大学減災連携センター教授。日本地震工学会会長、内閣府・中央防災会議作業部会委員、地震調査研究本部政策委員長等、公職を歴任。専門は建築耐震工学、地震工学、地域防災。「自然災害は防ぐことはできないが、その被害を減らすことはできる」が信念。研究のかたわら耐震を学ぶ教材を多数開発し、全国の小・中・高校等で「減災講演」を続けている。名古屋大学に巨大な建物を実際に揺らすことができる研究・展示施設「減災館」建設にセンター長として深く関わる。 

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